運河の音楽感想12

児童館でのワークショップのスタッフで、当日も様々なパフォーマンスの準備に動き回ってくれた橋本さんの感想です。


運河の音楽 感想
橋本麻希

1. 日清製粉前のパフォーマンスについて
 (1)当日
 当日の朝10時に艇庫に集合し、スタッフミーティングを終えて自転車に番号をふり、すぐに苑子さんの原付で日清製粉前へ移動。あまりの天気の良さに、これからの風船作業での日焼けの恐怖すら感じました。
 日清製粉横のマリンフーズの駐車場に到着すると、既に三宗さんと他2名の風船隊が車を止めて風船を膨らましてマリンフーズのフェンスに色とりどりの風船が並んでいました。2日前にアリさんと三宗さんがどのくらいの大きさの風船にどのくらいの重りをつければ浮くのかなど細かい実験をしてくれていたのですが、何しろあの岸壁に500個以上の風船を膨らまして整列させることなどぶっつけ本番以外の何物でもありません。間に合うのか?!という不安もあり、あいさつもそこそこに、私も作業に加わりました。
 まず、三宗さんと共に岸壁にビニールひもを垂らし、1mごとにガムテープで止めて印をつけていきます。ひもの全長は70mぐらいあったと思います。そしてこのガムテープで印をつけた部分に、ふくらまして重りを付けた風船をどんどん引っ掛けていきます。岸壁に入るにはフェンスを乗り越えなければいけないため、相談の上、三宗さんたち3人が風船をふくらましておもりをつけるところまでの係、私が岸壁側にいて三宗さんたちから風船を受け取り、ひもに引っ掛けていく係になりました。
 ここからはひたすら私は風船を持って岸壁に降りて風船を引っかけ、なくなったら風船をとりに戻って・・・という繰り返しでした。その作業の合間、法螺貝の音が聞こえたのでふと作業の手を止めて時計を見ると、12時15分でした。この法螺貝の音は中嶋のんとさんの作品の音だったのか、生音だったのかはわかりませんが、運河の音楽という壮大な音楽会の始まりを告げる音が聞こえ、作業をしながらもわくわくしたことを覚えています。
 まだまだ孤独な作業は続きます。孤独ではありますが、やっとのことで許可を頂いた日清製粉前の岸壁に本当に風船を並べているということだけでもわくわく感がありました。しかしこの時点でまだ岸壁の半分ぐらいしか埋まっていません。
 想定外のことがたくさん起きるものです。ヘリウムガスで風船をふくらます作業というのは、実は意外に難しいもののようでした。また、予想外の強風で、ヘリウムガスを入れた風船は一度にたくさん運ぼうとするとからまってからまって余計に時間がかかります。強風で浮いているはずの風船が岸壁のコンクリートにつくぐらいまで流され、割れてしまうものや、くくりつけたはずの場所からかなり移動してしまっているものもありました。要領を得たころには岸壁が風船で埋まろうとしていました。
 風船を持ってそろそろと岸壁に移動し、くくりつけていると、時折道林一家が運転するモーターボートが巡回していて、力強く敬礼してくれました。観客を乗せたレガッタも通ります。ボートにのった小さな子どもが、こちらを不思議そうに見ていたので、私は手を振りました。そんな日常と非日常の境界線でのやりとりもとても印象的でした。
 さて、神戸ドックからアリさんたちが到着し、日清製粉の工事現場へ入っていきました。風船作業は正直4人でやってぎりぎりでした。対岸に増え始めた人影に、なんとか間に合ってよかった・・、と思う間もなく、本番がスタートです。
 本番が始まってすぐ、私は色とりどりの風船を何十個も束にした風船ツリーを岸壁の真ん中にセットしました。その後はマリンフーズの駐車場側から風船をふくらましては水面に落とします。4人で風船を落とし続けること30分。ヘリウムボンベは1つしかないため、呼気でふくらましていた私たちは息も切れ切れでしたが、日清製粉前の水面に点々と流れる風船たちはとてもポップな空間を作り出していました。
 風向きの関係で風船隊の位置からは管楽器の音はあまりよく聞こえなかったことと、岸壁にくくりつけた風船が、アリさんたち演奏者が投げ込もうとしたときには更にからまっていて苦労させてしまったことはちょっと失敗したなと思いましたが、鉄骨や土などが見える工事現場とそのガンガン響く作業音と風船たちとアリさんたちパフォーマーが作り出したポップな空間が妙な対比を生んでいて、おもしろかったと思います。対岸から見ていた方はどのように感じたのでしょうか、上映会が楽しみです。

 (2)日清製粉前という場所について
 運河の音楽が主に5地点を移動しながら行う形式に決定したころ、私は正直日清製粉前のパフォーマンスが現実問題最も実現が難しそうだと思いました。(保安庁への申請などの面で。)その反面、アリさんの岸壁・水面を風船でいっぱいにしてずらっと管楽器奏者を並べて演奏するという案は、視覚的にも楽しく、魅力的な案だと思い、ぜひ実現したいと動き出したのでした。しかし12月頃、日清製粉前でアリさんたち考案のパフォーマンスができなくなる可能性が浮上し、アリさんも他の仕事との兼ね合いで人集めに苦労され、一時アリさんは辞退、日清製粉前のパフォーマンスが頓挫しかねない危機に陥りました・・・が、何とか実現させたいという気持ちで様々な方と連絡をとり、幸弘さん・りいさん・苑子さん・行政の方々などをはじめ様々な方々の協力のおかげで、実現することができました。今回の経験は私にとってとても貴重な経験となりました。ありがとうございました。

2.音楽の広場について
子どもたちはたくさんの観客や、吉田中の吹奏楽部の演奏の真横で出番を待つ独特の雰囲気に少し緊張していたようですが、生き生きと演奏してくれたと思います。本番直前まで子どもたちをまとめ、連れてきてくれた西さん足立さんに感謝です。ありがとうございました。
演奏の中で特に印象的だったのは、電車の音楽のときにふうまくんがのびのびと演奏していたことや、プールの音楽のときにしゅうやくんとほのかちゃんの演奏に聞き入りその場がしーんとなったこと、しゅうやくんの元気な指揮、最後の指揮に立候補したふうまくんの表情豊かな指揮…などなどです。
りいさんの要所での声掛けは、やはりさすがだなと思いました。
ただ私が一つ残念だったのは、りゅうじくんのガイコツがいつもより控え目だったことです。(楽器もいつもは2つ持つのに当日は恥ずかしかったのか、1つでいいと言って持たなかったですし…。)

今回の出張プログラムでは、参加児童の年齢や参加児童がある程度継続して参加してくれるという状況はあーちの活動とは大きく違っていましたが、私は今回の出張プログラムのおかげで、参加者とのコミュニケーション力が向上し、自分が質の高い音を出すことに集中でき、そしてスタッフ同士の連携が強化されたように思います。
もし今後、せっかく御崎児童館とつながりができたので、御崎児童館での活動を月1回とかでも続けていけるのであれば、やってみたいと思います。