運河の音楽感想11

地域の児童館の子どもたちとのワークショップを通して、絵楽譜を使った演奏をおこなった、西さんの感想です。


「音楽の広場」と題して御崎児童館の子供達との絵楽譜演奏。自分自身が知らない施設に入り込み、その子供達と関係を作っていき、最終的には共に音楽を作って発表なんてできるのだろうか、と初めは不安に思っていました。が、最終的にはその子どもにどうしようもなく嬉しい言葉をもらいました。この御崎児童館の子ども達と出会い発表するまでの経緯を少し振り返ってみます。
まず区役所の伊賀さんに「運河の音楽で子供達と何か音楽の発表をしたいので、音楽の広場の出張ワークショップをしたい」という相談を持ち掛けたところ、1月末に明親地区の児童館で行われた子育て交流会にて石澤さんを紹介していただきました。そして石澤さんに音楽の広場の活動を説明したところ興味を持っていただき、運河周辺の地区でワークショップができるように手配して頂きました。そこで紹介してもらったのが御崎児童館でした。2月頭に児童館へ訪問し、運河の音楽出演を見越してワークショップをさせてもらえないか、音楽の広場の活動の紹介や運河に向けての企画書の説明をしました。が、これまでの伊賀さん・石澤さんも同様なのですが、この「絵楽譜」を理解してもらうことが、私の説明の仕方が上手くないこともあいまって難しかったです。誰しも初めは、絵を音楽にする…んん??といった具合に、どれだけ言葉で説明しても明確なイメージをつかんでもらうのは容易ではなかったです。児童館での説明では、なぜか石澤さんが児童館の館長さんに絵楽譜について熱弁してくださったのが印象的でした。私の役割なのにすみません…でもそれだけ理解して頂いて嬉しい…いや、でも私がちゃんと説明しないでどうする…と、複雑な感情で石澤さんの説明にのっかりながら館長さんにプレゼンしました。その甲斐あってか、館長さんと指導員の足立さんに全5回のワークショップの許可をいただくことができたのでした。
そしてその5回のワークショップですが、なぜかほとんど雨でした。ワークショップを行っていた金曜は、狙ったかのように雨でした。楽器は大学から車で運び出していたので、楽器が濡れないように出し入れするのに困りました。雨女が絶対いたに違いない。でも子供たちはそんな雨等関係はなく、本当に元気、とても元気、とにかく元気で、いつもすごいパワーを見せてくれました。楽器を自由に演奏する機会がおそらく学校ではないのか、自由に遊んでもらうとどんな楽器にも興味を見せて楽しそうに演奏してくれました。
絵楽譜の演奏をするとこちらにも興味をもってくれ、自分も演奏したい!指揮したい!描きたい!と手を挙げて希望をどんどん出してくれました。そして思った以上に絵楽譜について理解して、素晴らしい絵楽譜を作成し、それを音にする段階でも創造的な表現をたくさん生んでくれました。
そして本番の直前、児童館で最後のリハーサルをすると、緊張している子どもや、わくわくしている子ども、すごく楽しみで家族も見に来るということをうれしそうに伝えてくれる子ども、それぞれ自分が発表するということを彼らなりに感じとっていました。この調子だと大丈夫かな、と発表場所まで移動すると、周りのにぎやかな雰囲気にのまれてしまったり、家族を探しに行こうとしたり、演奏している団体の方へふらふらと誘われたり…子どもだからしょうがない、でも大変だ、なんとかせねば、と思って一人一人と気持の確認をしました。なんとか落ち着いた頃にスタッフも全員揃って本番を迎えました。
まずスタッフだけで演奏したのですが、私は指揮をするためにすこし高くなった所にいました。朝にここに上ったときにせまくて動きづらいと思っていました。傍で見ていた若尾先生も足場が悪いので心配してくださっていました。そうしたら、案の定、お約束通り、私は足を踏み外して、落ちました。
子どもの頭の高さぐらいから落ちる数秒の間に、「ここでこけてしまって怪我でもすれば演奏が中止になる、なんとしてでもちゃんと着地してすぐ持ち直さなければ!!」と頭の中で思ったのがよかったのかどうかわからないけれど無事着地し、すぐにまた壁に上り指揮を続けました。いや、本当に何もなくてよかったのですが。
次に子供たちも演奏に加わりました。いつも魅力的な指揮をしてくれた男の子は本番でも子供達の演奏のよさを引き出し、ソロをしてくれた男の子は少し緊張して照れながらも最後まで演奏をやりきり、2人でプールの音を演奏した子どもは、終わりの難しい即興演奏を自分たちでタイミングを見つけてきれいに終わり…どの子も自分の音楽的役割を果たしながら、一生懸命に、かつ楽しそうに演奏してくれました。最後はまた子どもに指揮をしてもらいましたが、指揮者の男の子も演奏していた子どもも、満面の笑みで元気いっぱい体全体で音楽を表現してくれました。
演奏が終わった後児童館に戻って参加賞を渡すと、なぜか金太郎飴:お風呂の割引券=1:9くらいの割合くらいの反応が返ってきたのが面白かったです。子どもは飴よりお風呂の方に興味があるのかという驚きがありました。そして感想を聞くと、全員から「楽しかった」という答えが返ってきて、また、やりきった満足感でいっぱいの顔を見て本当にやってよかったと思いました。そして帰り際にある女の子から、この運河の音楽のことを「一生忘れへん」という言葉をもらいました。これが、私がどうしようもないくらいに嬉しかった言葉でした。子どもにそう言わせるまでの体験を自分たちと子どもたちで一から作り上げることができたことは素晴らしいことであるし、子どもに満足してもらったことが音楽の広場のなによりもの成功になったと思います。また、運河の音楽に参加し、音楽の広場のスタッフの連携や参加者との関係作りなどたくさんのことを勉強する機械にもなりました。この経験を今までのプログラム活かすとともに、再度子供達と共演できたら、と思います。